LIBERTY
 
konomi's lonely room
 



銀世界

ぁたしは一人深い森を歩いていました。

まだ鳥も風も寝ているような時間。

肌寒い澄んだ空気。

もう春だというのにまだ此所は雪溶け頃。

ぁたしは一人あてもなく歩いていました。



かなり深くまで来たようで

陽は頂上で弱々しく光を放っていました。

あたしは歩くのに疲れて休むことにしました。

足下の岩に腰掛け、樹液を飲みました。

だけどそれは胃痛を伴い吐き気を誘いました。



ぁたしはまた歩き始めました。

行く先なんかないのに。戻る場所すら解らない為。

ぁたしはただ思う儘に歩きました。

胃は更に痛み、苦しくて苦しくて仕方ありませんでした。


時々立ち止まってはうずくまり、またその長い道を見つめ、歩きました。

するとふと道は途切れ

あたしは足を止めました。

今までとは違う土の感触。

ずっと足下を見て歩いていたぁたしは

久しぶりに前を見ました。

いつの間にかすっかり暗く、一段と冷え込んでいることにやっと気付きました。


しかしそれよりも

目の前に在るそれは綺麗な銀世界にぁたしは目を疑いました。

見た事のないような広野。

誰も立ち入ってない一面の雪。

夜なのに眩しさ溢れる白い絨毯。

ぁたしは疲れなど無かったかのように

足を進めました。

瞬きすら惜しんでその世界に溶け込みたかったのです。


少し歩くともう全てが雪景色でした。

しかし真っ白な中に紅く輝くものが見えたのです。

ぁたしはすぐにそれが薔薇だと解りました。

厚い雪から少しだけ顔を出した真紅の薔薇。

ぁたしは座り込み、まるでこの薔薇に会いに来たかのように話し続けました。

薔薇は何も言わず、ただ顔を出しているだけでした。

それでもずっと此所に居たいと思いました。

この薔薇が枯れて土に還るまで…。



しばらくしたある日。

いつの間にか眠っていたあたしはふと目を開きました。

薔薇は変わらず輝いていました。

しかし薔薇と同じ様に綺麗に輝いているものを見つけて終いました。

久しぶりにぐっすり眠ったからでしょうか。

何日かぶりに空を見上げたそこには

夜空を埋め尽くす星でした。

今まであたしの足下を照らし

銀世界をより輝かせ

薔薇を真紅にしていたのは

全てこの星なのではないかと思いました。

ぁたしはこの空に恋をし

薔薇の傍で永遠に

生きようと決めました。





そこは天国でも楽園でもなく



ぁたしにとって

唯一の

あたしの儘で居られる

居場所だったから。





有難う。











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2007-05-14

昔の日記の1ページ
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11/17(木)13:37 | トラックバック(0) | コメント(0) | *サモトラケのニケ* | 管理

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